暮らし情報

時間と空間の旅

上田裕則

Vol.78「笑顔の裏側にあるもの」

先月号で、フォルクスワーゲン・ビートルの話をしたのですが、ちょうど時を同じくしてビートルの生産が終了しました。最後にロールアウトした一台と一緒に写真を撮る工場のみなさんが抱く誇りと寂しさ、 「俺たちは、私たちがこの車を作ってきたんだぜっ!」

私たちには計り知れないさまざまな感情が混じった笑顔でカメラに収まっていたのがとても印象的でした。

そしてつい先日、同じようにモノづくりをしている、たくさんの尊い命が一瞬で奪われるという悲惨、凄惨な事件が起きました。

「パクりやがって」

小説というものは、多かれ少なかれ似ているものです。

大ヒットとなった「君の名は」も、私たちの世代からみると大林監督の「時をかける少女」と基本的設定は同じに見えます。でも、だれもパクリとは言わないですよね。時空を超えてみたい、生まれ変わったら男の子になってみたい、女の子になってみたい。時空を超えてお互いを理解し合い、成長する少年少女を描くテーマは特別なことではありません。

自分が書いた小説、一つひとつの作品に込める想いが強いのはどんな書き手も同じです。採用されなかったのは、やはり他に優れた作品があったからで、それを逆恨みして、若い命と技術、多くの未来を一方的に理不尽に奪う理由には絶対になりませんし、言語道断、決して許してはいけない。許されない。

この事件で使われたガソリンですが、もしかしたら犯人は灯油に火をつけるように燃えると誤解誤認をしていたのではないでしょうか。ガソリンの性質、危険性を少しでも知っていたら、あんな風にバケツに入れて運ぶなんて考えられません。

自動車の燃料として広く使われているガソリンは、エンジンの中に噴射されたほんのわずかな気化したガソリンで時には4人も5人も乗った自動車を動かすことが出来るくらいの非常に高い爆発力を持っています。マイナス四十度で気化を始めるガソリンは、プラス四十度にならないと気化しない灯油とは全く性質が異なります。ガソリンスタンドで、給油口を開けた瞬間から、気化したガソリンが辺りに充満して給油者のからだの周りに溢れます。セルフのスタンドを利用する人も多いと思いますが、冬にセーターから発生したわずかな静電気で発火し、燃え上がることもあるのです。有人のスタンドでも、火が消え切っていないタバコの吸い殻を車の外に出す人もいるそうです。エンジンを切らずに給油する人もいるそうです。これ、自殺行為どころか、ガソリンスタンドごと爆発的に吹っ飛んでしまいます。これらは京都の犯人とやっていることは同じです。ガソリンの危険性をもっとドライバーは知るべきです。

ガソリンスタンドではエンジンを切って、静電気除去シートに必ず触れて、スタンドの人のいう事をちゃんと聞いて、安全に正しく給油しましょう。

雨の多かった梅雨も明けて、暑い夏が9月、10月ごろまで続くのではないかと思っています。それぞれの愛車で時間と空間を超えて、楽しい笑顔にあふれた、たくさんの想い出を安全安心につくっていきたいものです。

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

有限会社いわき損害保険サービス
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