暮らし情報

時間と空間の旅

上田裕則

Vol.80「こんなことは初めてだ」

ある日の事。暗い部屋に異常事態を知らせる赤いインジケーターランプが二つ光っていた。マズいことが起きてるよ、と。なかなか気の利く機械だ。

よく見ると、ルーターのネットランプと電話ランプが赤く光っている。つまり、インターネットも電話も使えませんよ、ということ。これはまずいと思って回線の終末装置(ONU)を見ると、通信ランプが消えている。これはかなりまずい。Wi-Fiが使えないどころか、通信そのものがダウンしている可能性が高い。

僕はデジタルを全面肯定したくない。

Iotだか、キャッシュレスだか知らないが、全てをデジタルで管理する、管理されるのには抵抗感が強い。アナログには、まぁ、このくらいでいいでしょうという、懐の広さというか、余裕があるのに、デジタルには、これはこうです! これ以外にありません! とバッサリやられる。それは正解かもしれないが、世の中は正解ばかりで動いているわけではない。

僕はどちらかというと、正しいんだけど、間違ってもいないという〝あそび〟の部分で動いているところが大きいのではないかと思っているのだ。

けど、時には間違ってはいけないこともある。

先日、台風十五号で神奈川県や千葉県一帯が大きな被害を受けた。

なぎ倒された電柱、倒れたゴルフ練習場の支柱。風速六十メートルを超える暴風が吹き荒れれば、さもあろうと思う。台風の進行方向、東側に入るという事はどういう事かという事も、まざまざと見せつけられた。

思うのは東京電力の見通しの甘さ。もっと丁寧に情報を出していれば、一時県外避難をするとか、もっと多様な避難行動に繋がった可能性があるし、犠牲者を出さずに済んだ可能性だってある。ゴルフ練習場のネットを下げない危機管理の甘さにも驚く。

暴風が吹き荒れると、あれほど気象庁が警告を出していたにもかかわらず、対策本部を設置しない、設置しても解散する、要請がないから支援をしない不思議な行政。

前にも言ったことがあるけれど、災害のまん中にいて、最も情報を必要とする人たちが、最も情報が取れない情報難民になるのであり、情報の発信すら不可能になるんだという事が、これだけ各地で災害が起こっているのに〝お役所〟は分かっていない。お役所の事なかれ主義もここまで行くと、笑いの種になるが、実際の被災者は笑ってなどいられない。

自然災害はどこにでも、いつでもやってくる。逃れられる場所などないのです。いわきは災害に強いよね、やっぱり今回も大丈夫だったね。そういう声もあるし、今回の台風でも聞きました。でも必ず災害は起こります。そして言うのです。

「こんなことは初めてだ」と。

あたりまえです。こんなことが何度もあったら困ります。

前触れもなく、ネットに繋がらないという災害に遭って、知らず知らずのうちに、いかに自分がデジタル漬けになっていたかに気づきました。こわい、こわい。

災害はどんな形でやってくるか分かりません。もし、電気が来なかったら、水が無かったら、ネットが使えなかったら、とあなたの「こんなことは初めてだ」を想像してみてください。決して他人ごとではないのです。

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

有限会社いわき損害保険サービス
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