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古扇亭唐変木(古川 隆)

笑いを通して人とつながり、笑いで街を元気にしたい
 古川隆さんは、古扇亭唐変木(こせんていとうへんぼく)という芸名を持つアマチュア落語家です。土地家屋調査士・行政書士の本業を持ちながら、落語の世界に魅せられどっぷり浸って30年以上。街に笑いと元気を届ける活動をしています。

一生懸命に生きる庶民の暮らしを笑いで表現する「落語」

 落語が一芸として世に出たのは、今から約300年前、江戸時代中期と言われています。貧乏長屋が舞台となる、八っつぁん、熊さんの話に代表されるように、町民と呼ばれる低い身分の人々の間で生まれました。そのため古典落語の噺は、毎日の辛い生活を一生懸命生きていた人々の知恵が、笑いと一緒に語られています。
 落語は、座布団一枚の上で演じる一人芸です。台詞だけで物語を展開し、言葉のリズムや間の取り方、顔の表情やしぐさなどで性別や身分までも表現。人々を笑いの中に誘うためには、巧みな話術や高い表現力が要求されます。使う小道具は、基本的に扇子(せんす)と手ぬぐいだけ。扇子は蕎麦をすする箸や刀になり、手ぬぐいは財布や煙草入れに化けます。

演劇からスタート落語を始めて30年以上

 古川さんはもともと、地域で演劇活動をしていて、スタートは高校時代の演劇部でした。仲間と舞台を作り上げ、舞台の上で表現する醍醐味。さらに、観ている観客との一体感など、多感な青年期に触れた演劇の世界は、古川さんに大きな影響を与えました。 社会人になっても、精力的に演劇活動を継続。20才の時に仲間と共に、劇団「いわき小劇場」を立ち上げ、演じる者として活躍しました。
 また、いわき出身の演劇人を応援しようと、公演を行う「ほろすけの会」を設立するなど、地域の中に文化として演劇が根を張るための活動をずっと続けています。

演劇も落語も同じ
落語は一人芝居なんです

 演劇と共に青春を過ごした古川さんが、落語を始めたのは30代になってから。「演劇は、仲間との共同作業。仕事も家庭もますます責任が重くなり、時間的にも困難になって」「落語は言ってみれば一人芝居。演じるという意味では同じなんです」座布団一枚の上で行う芸に、古川さんは没頭します。東京の寄席に何度も足を運び、独学で勉強。台本がないため、耳で聞き、目で見て学びました。

街に笑いを届けたい

 50代になってから意を決し、100の噺を語ろうと、「百席の会」を始め、毎月一回地元の集会所で寄席を開き、5年前に100席を達成しました。寄席には知人友人や地域の人々が集まり、街の中に笑いを届けた4年間です。
 震災後は、約10ヶ所の避難所で、出前寄席を行いました。「笑ってくれる人もいるし、遠くで見ているだけの人も。これが、今の現実です」と古川さんは言います。
 「今までは古典落語が中心でしたが、これからは、時代を映す創作落語にも挑戦したい」温かい眼差しで見つめる庶民の日常の中の喜怒哀楽と、正面から見える今の時代を、落語という笑いで表現する新しい挑戦です。
落語、漫談、パントマイム、マジック、けん玉など、様々な芸を持つメンバーが参加する「いわき芸能倶楽部」に所属。子供会のイベントや老人施設、商店会などで公演し、現在は復興イベントでも活躍。声がかかればどこにでも行って公演しています。

古扇亭唐変木(古川隆土地家屋調査士事務所) いわき市平字月見町19-1 ■TEL.0246-21-2978 ■FAX.0246-21-2695

この記事は2011年9月号に掲載されたものです。掲載当時と内容が異なる場合があります。ご了承ください。