暮らし情報

時間と空間の旅

上田裕則

vol.87「滅びの種」

新型コロナウィルスが、地球上で猛威を振るっています。ちなみに、この新型ウィルスの正式名称は、SARSーCoVー2(略して、SARS2)。報道でよく見かけるCOVIDー19は病名です。

最も大事なのは、このウィルスが「新型」だということ。罹患して治癒した人以外、地球上の誰も免疫を持っていません。もちろん、ワクチンも治療薬もありません。

未だ罹患していない誰もが、罹患する可能性があります。例外はありません。

ワクチンや治療薬が手に入るまでには、まだ一年とか二年の時間を要するとも言われます。集団免疫の獲得までには、総人口の六割、七割の罹患が必要です。日本なら七二〇〇万人、地球上では五十億人弱の罹患が必要です。いったい、それまでにどれほどの時間と犠牲を必要とするのでしょう。

現在のところ最も有効な手立ては、動かないこと。外出をしないで、人と接触をしないことしかないのです。外出自粛、事業の営業停止はここに理由があります。ですから、自分勝手に理由を付けて、不要な外出するのは辞めましょう。

ちょっとだけなら、私一人くらいって、みんなが考えたらどうなるか。

ところが人が動かなければ、経済活動が成り立ちません。

病気になる前に、別の理由で生きていくことが難しくなってしまうという、これもまた現実です。他人ごとではありません。物流だって、トラックや鉄道の運転手が病気になれば、無傷ではいられません。

総てにおいて経済優先。株価動向に一喜一憂し、経済のグローバル化こそが時代の本流。そう言って憚らなかった人類は、奇しくもそのグローバル化によって滅亡の淵に立たされている。私たちが当たり前のように過ごしてきた毎日が、いかに奇跡的だったのか、そしてこれほどまでに脆いものだったのか。思い知らされています。

このSARS2もいつかは必ず、感染拡大が縮小し、インフルエンザと同じような病気になるのでしょう。でも、それまでに飲食店、宿泊施設をはじめ、数えきれないほどの中小零細企業が姿を消すでしょう。多くの人が亡くなってしまうことも避けられない。長い、長いトンネルを抜けたときに、そこに拡がる景色は、今とは全く違うものになっているのかも知れません。町の風景も、社会のしくみも。

いままで何も考えずに過ごしてきたあたりまえの毎日の基盤が、いま音を立てて崩れ落ちて、全く新しい世界と社会の枠組みが構築されていく。そのプロセスを私たちは目の当たりにしているのかも知れません。

あたりまえは、決してあたりまえではありません。いまこそ、生きている奇跡に正面から向き合わないといけない。奇跡は起こり続けるものではないのです。

四十六億年の地球の歴史上、大繁栄した生物は例外なく絶滅しています。私たちヒトも決して例外ではありません。

私たちは、自身を含めて、存亡の危機にあるという自覚と覚悟をもっともっと、持つ必要があるんだと思います。

いま、今日を生きていることはあたりまえではありません。

滅びの種は、すでに私たちの中にあるのです。

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

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